2013年6月30日日曜日

ドルの崩壊と資産の運用―通貨制度の崩壊がもたらすもの を読みました

ドルの崩壊と資産の運用―通貨制度の崩壊がもたらすもの ジェームス ターク

 金投資を考えているなら、そこそこ面白いと思います。

結論は、タイトルとおりで「ドルが崩壊するから金を買いなさい」という内容になります。
著者の主張に全面的に賛同はできませんが、内容はそこそこしっかりとしています。

かなり断定的で不安を煽るような書き方ですが、金投資の考え方を勉強するという点では参考になります。

金の歴史、金本位制の歴史について要点を押さえて解説してある点も良いですね。

銀への投資についても詳しい解説があり、こちらは今まであまり読んだことがなかったので面白かったです。

銀への投資も相場観があるのであれば有望かもしれません。銀の供給は減っているようです。

プラチナ・パラジュウムに関する解説も少しだけあります。このあたりの解説は珍しいですね。

ちなみに、金鉱山株への投資の説明もあります。

また、アメリカ住宅はバブルだと結論しており、丁度サブプライムローン問題の直前に書かれている本なので予想は的中しています。(まあ、多くの人がアメリカの住宅市場はバルブだと言ってましたが・・・。)

全体的にアメリカに住んでいる人向けに書かれているので、日本での投資環境に合わない記述があります。
アメリカでの金の延棒の買い方などの解説は日本では役にたたないでしょう。

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2013年6月22日土曜日

まぐれ を読みました オプションのロング戦略、ボラティリティ・ロング戦略について

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか ナシーム・ニコラス・タレブ
読みました。

 とても面白い本でした。
オプションをトレーディングしている人なら勉強になると思います。

ちなみに、タレブ氏はオプションの買を推奨しています。
まあ、オプションのロングが専門のヘッジファンドを運用しているので当然だと思いますが。
私はカバードコールのオプションの売りがメインなので、著者のタレブ氏とは投資スタンスが正反対です。
ただ、「確率は低いが稀に起こる期待値が高い賭けに参加する」というのは合理的で有効な戦略だと思います。

タレブ氏のオプションロングはブラックスワン待ちのロングであり、単純に株価が上がると思うというロングではありません。
本書はタレブ氏自身が自分の戦略を「ボラティリティ・ロング」という表現で紹介しています。ちなみに、素人が実践するには精神的にも技術的にも難しいと思います。
以下に、この本で面白い・参考になった箇所を抜粋します。
(抜粋P.72)弱気派は急騰でハエみたいにバタバタ落ち、強気派は音楽が止まると絵に描いた餅の利益が消えて皆殺しだ。でも、一つだけ例外があった。オプションを取引をしていた連中の一部(オプション買い派と呼んでいた)は目覚しい持久力を発揮していた。私もそうなりたいと思った。
オプションプレミアムの需要な要素にボラティリティーがあります。タレブ氏のオプション買いは、ブラックスワンが現れたときに大勝するポジションなのでしょう。
(抜粋P.84)私が仕事を始めたころ、雑音に耳を澄ませている連中を見るのは我慢がならなかった。そうやって情報を手に入れようとしても、統計的に有意ではなく、だから意味のある結論は出せないからだ。
まあ、ニュースを追ったところでそのニュースから統計的に有意義な要素を抽出するのは不可能でしょう。相場を予想するのが不可能なのと同じことで。
(抜粋P.134)私がずっと市場でやってきた仕事は、「歪みに賭ける」と言うのが一番合っている。つまり、まれな事象で賭けるのだ。稀な事象はめったに起きないけれど、その分、実際に起きればとても儲かる。(抜粋P.135)オプションを買えば90%の割合で損をするという統計は、残る10%のときに平均でいくら儲かるかを考えないと、明らかに意味がない。オプションを買ってイン・ザ・マネーで終わった場合、賭け金が50倍になるのなら、オプションを買うのは貧乏人じゃなくて大金持ちへの近道だと言っていいだろう。
起こる確率が低くても儲かる方に賭ける方が正しいとのことです、確率と期待値の話ですね。私も確率よりも期待値を見るべきだと思います。
(抜粋P.155)損をする確率は小さいが実現すれば大きな損が出る一方、儲かる確率は大きいが実現しても利益が小さいとき、ゲームに勝つ確率を最大化しても、ゲームで得られるものの期待値は最大化されない。低い確率で大きな損失が発生し、高い確率で小さな利益が出る、ロシアン・ルーレットのような戦略を実行すると、数年ごとに破産するけれど、どのサンプル経路でも勝ち組ともてはやされることになるだろう
カバードコールのデメリットではありますね、高い確率で小額を儲けて、低い確率で大損をする。
(抜粋P.167)積極的な賭けをするときには統計学と帰納法を使うけれど、リスクやエクスポージャーを管理するのには使わない。~生き残っているトレーダーは全員そういうやり方をしているようだ。
統計や確率ではブラックスワンを回避できない、ブラックスワンを回避できないといずれ破滅するということでしょう。
(抜粋P.255)オプションを買うのも捨て金とは違う。プロでもその点はよくだまされる。なぜだろう?期待値と一番可能性の高いシナリオを取り違えるのだ(ここの例では期待値は1ドル、一番可能性の高いシナリオでのオプションの価格はゼロだ。)彼らの頭の中では、一番可能性の高い状態、つまり市場がまったく動かない状態の比重が大きい。一方、オプションの価値は、資産がとりうるすべての状態にもとづく価格を単純に平均したものなのだ。 
(抜粋P.255)私が「ボラティリティ・ロング」と呼ぶポジションを持ち続けられるオプション・トレーダーはとても少ない。ボラティリティ・ロングは、権利行使日に少し損をする可能性がとても高いけれど、ときどき市場が大きく動くために、長期では儲かると期待できるポジションだ。
単純に株価が上がるからオプションをロングしようという発想ではありません、ボラティリティと期待値を計算した上でブラックスワンが現れた時に大勝するというポジションです。素人にはハードルが高い戦略だと思います。

オプションに関する記述はP.253~257あたりです。ここではコツコツとプレミアムをためる戦略を批判して、タレブ氏が実践しているオプションロング戦略の概要がかかれています。(概念の話で、実際の細かい数字の話は出てきませんが。)

凄く面白くて冷静になれる本です、バリュー投資とか資産運用というスタンスとは少し違うかもしれませんが、オプションを取引するならこのあたりの考え方(確率・期待値・平均とか)は理解をしておいた方がいいと思います、オプションの醍醐味ですから。

2013年6月12日水曜日

オプションの売りはそんなに危ないのか?

今、色々とデリバティブ関連の簡単な本を読んでいます。(私は素人なので専門的すぎると理解できないので・・・)

日本の本でオプションの売りを進めているのは非常に少ないですね。

今読んでいるデリバティブ関連の本、
新版 マネーはこう掴む: 個人で使えるデリバティブ (光文社知恵の森文庫) 藤巻健史 

(抜粋)基本的には、コールオプションにしろ、プットオプションにしろ、私が皆さんに勧めるのは買いだけです。売りはやめたほうがいい。買いだけにしてください。今までに、私自身も売りをやったのは長いディーラ人生で1、2回しかありません。それだけのチャンスしかなかったということでもありますが。
と書かれています。

“個人で使えるデリバティブ”と副題がついていたので、期待をしたのが残念でした。
確かにオプションの売りはリスクはありますが、原資産(現金か株)を用意しておけばカバーできます。

上記の抜粋にあるように、そこまで拒絶をする必要はないと思います。
(確かに、買いのリスクは支払ったプレミアムのみなので大損はしません。)

あわせて、オプションの買いはタイムプレミアムを支払い、オプションの売りはタイムプレミアムを受け取るという点については書かれていません。

カバードコールやキャッシュセキュアードプットの情報は「新版 マネーはこう掴む: 個人で使えるデリバティブ」には書かれていません。その辺の情報が欲しい人には向いていないですね。
デリバティブの買から入るトレーディングタイプの人には面白いのかもしれませんが。

というわけで、オプションの項目を少し斜め読みして読むのはやめました。

日本語で兼業個人投資家の利益になるオプションの利用方法が書かれている本は「週末投資家のためのカバード・コール」ですかね。

2013年6月8日土曜日

長期投資ならば相場に一喜一憂しなくていいんじゃないか

長期投資かつ分散投資をしていれば相場に一喜一憂する必要はないと思います。

国やセクターを分散したETFを保有していれば、資産が0になることはないので慌てる必要はありません。リーマンショックですら-40%位でしたから。

また、カバードコールを利用すれば下げ相場でもキャッシュが稼げます。

不動産オーナーは不動産価格で一喜一憂しないでしょう。
(そもそもタイムリーに価格がわからないので、一喜一憂のしようがないのかもしれませんが。)

不動産の価格であたふたしないのと一緒で幅広く分散した株式のポートフォリオを保有しているのなら焦る必要はないと思います。

そういう意味で、柔軟にキャッシュが稼げるオプションは精神安定上いい気がします。
(必ず儲かるという意味ではなく、気持ちの問題ですけど・・・)

オプション関連、カバードコールで参考にするなら、

<関連投稿>
現実的な運用利回り・リターンを目指す

2013年6月6日木曜日

BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン株式会社 「カバードコール戦略の考察(2012/10)」の紹介

BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン株式会社
のサイトで「カバードコール戦略の考察(2012/10)」というレポートがあったので紹介します。
(抜粋)カバード・コールは、上昇余地を一部犠牲にすることになるものの、ファンドの利益を継続的に増加させることができるため、伝統的な資産の長期保有を、投資家の希望するリスクとリターンに応じて修正することができる、魅力的な手段となるからで。
その通りですね、上昇相場での大勝をあきらめるかわりに、コンスタントにキャッシュフローがプラスになります。
(抜粋)カバード・コール・ファンドの重要な特徴は、(原資産と比較した)その成功度合いが、市場が下落基調にあるか、上昇基調にあるか、あるいは横ばいに推移するかに大きく依存していることです。下落や横ばい基調の市場では、オプションが追加的なキャッシュ・フローをもたらすため、カバード・コール・ファンドは原資産をアウトパフォームします。上昇相場ではオプションが行使されるため、カバード・コールは原資産をアンダーパフォームします。カバード・コール・ファンドにとって最悪と言える市場は、一貫した上昇トレンドも一貫した下降トレンドも示さない変動の激しい市場です。こうした市場では、投資家は市場が下落したときに損失を受ける一方で、市場の上昇時にその損失を回復できない可能性があります。こうした好ましくない結果を下図に示しています。この種の市場では、カバード・コール戦略は原資産を大幅にアンダーパフォームします。
ただ、上昇相場か下落相場かは事後にしかわかりません。
「カバード・コール・ファンドにとって最悪と言える市場は、一貫した上昇トレンドも一貫した下降トレンドも示さない変動の激しい市場です。」というのは確かだと思います、上下の変動が激しい相場はポジションを調整するのに苦労します。
(抜粋)一般的に言って、使用するオプションの数は多いほうが好ましくなります。理想的な状態は、多くのオプションのロールオーバー・プログラムを用いて、どの個別株についても常時 3~4 枚のオプションを保有している状態です。
上記はカバードコールファンドを運用する場合のアドバイスですが、オプションも分散かつ定期的に理バランスをした方が良いみたいです。
(抜粋)オプション市場は長期間、想定される公正価値から乖離していることがあり得るため、売り建てているオプションが一貫して過度に低価格になっていないかを判断する尺度を定めることが望ましくなります。現実には、資産の「公正価値」を完全に評価することは不可能であり、オプションではそれが特に難しくなります。しかしながら、「代用的な」尺度を定めることは可能です。そのための単純な方法の一つは、原資産のヒストリカル・ボラティリティと比較したオプションのインプライド・ボラティリティに着目することです。これは、公正価値を定める完璧な方法とは言いがたいものの、市場価格が不当かどうかの判断材料として役に立つことがあります。インプライド・ボラティリティがヒストリカル・ボラティリティよりも高ければ、オプション価格が過度に高く、インプライド・ボラティリティが低ければ、価格が過度に低いということになります。売り建てようとするオプションの価格が低すぎる場合、そのオプションがポートフォリオのリターン全体の足かせとなるため、全体のカバレッジ・レシオを引き下げるのが賢明でしょう。
原資産のヒストリカル・ボラティリティと比較したオプションのインプライド・ボラティリティを相場の方向、価格のあたりをつける判断材料の一つにはなります。

具体的には、
インプライド・ボラティリティ > ヒストリカル・ボラティリティ ⇒ オプション価格が過度に高い
インプライド・ボラティリティ < ヒストリカル・ボラティリティ ⇒ オプション価格が過度に低い


レポートはカバードコールのファンドを運用しているファンドマネージャー向けのアドバイスも多くありますが。カバードコールを採用している個人投資家にも参考になると思います。


2013年6月2日日曜日

株価の下落時はポートフォリオを見直すいい機会

株価の下落時はポートフォリオを見直すいい機会だと思います。

「山崎元のマルチスコープ」の「【第281回】 “激震”株式市場の今後を展望する」でもアドバイスがあります。
こうした急落場面があったときは、株価の位置や投資環境、自分の投資の状態などを改めて点検し、確認しておくいい機会だ。
とアドバイスがあります。
前週末比469円安の急落を経た27日月曜日のマーケット(日経平均は1万4142円)では、東証一部の平均PERは16.1倍となった。これを益利回りに直すと、6.2%となる。名目成長率の政府見通しは2.7%(2月28日閣議決定)であり、両者を足し合わせると8.9%もある。長期金利は0.83%なので、両者の差は8%強となる(リスクフリーレートを長期金利、利益成長率が名目GDP成長率と同じでかつ一定と仮定した場合の「リスクプレミアム」に相当する)。
 この方式で計算したリスクプレミアムに対する筆者の高安判断は、リスクプレミアム6%なら株価は「普通」、7%なら株価は「安い」というものなので、現状は「大いに安い」と言えるレベルだ。 
山崎氏はプロですので相場の予想をされていますが、素人が予想をするのは難しいと思います。
ただ、アセットアロケーションにしたがってポジションを調整するには良い機会でしょう。

日本株は上昇していますが、円安であることをあわせると以外とポートフォリオに占める日本株式の割合が低い人もいるのではないでしょうか。

私は自身は相場の予想で投資はしません。アセットアロケーションに従いリバランスをしています。

あわせて、カバードコールをしている人はオプションのフォローをするいい機会です。
特に相場の急落時はショートしているアウトオブザマネーのコールオプションの価格が下がるので、ローリング・ダウン&アウトの良いタイミングになります。

原資産の価格は下がって評価損になるかもしれませんが、ショートしているオプションのプレミアムも同時に下がるのでポジションを調整する絶好のタイミングになります。

参考にしている本
週末投資家のためのカバード・コール

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